長年にわたり、メンタルヘルスの専門家たちは、ソーシャルメディアが若者の自己イメージに及ぼす影響について警鐘を鳴らしてきました。特にFacebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームが、未成年者を含む脆弱なユーザーの不安感を利用して利益を上げていると指摘されています。
そうした懸念は、今年3月にさらに深まりました。元Facebook幹部のサラ・ウィン・ウィリアムズ氏が、自身の暴露本の中で、同社が自撮り写真を削除した10代少女のアカウントを意図的に追跡し、その後美容広告を配信していたと告発したためです。
2011年から2017年までFacebookの公共政策ディレクターを務めた、ニュージーランド出身の弁護士で外交官のサラ・ウィン=ウィリアムズ氏は、著書『Careless People』の中で、若者の不安を利用することは「システム上の欠陥」ではなく「機能の一部」であったと指摘しています。Facebookは、感情プロファイリングやリアルタイムの行動データを活用し、ユーザーの自己不信の兆候を捉えて外見に関連する広告を配信していたとされています。
ウィン=ウィリアムズ氏によれば、Facebookは10代の少女が自らの写真を削除したタイミングを「自尊心の低下の兆候」として捉え、美容関連広告を配信していたとされています。
同氏は著書の中で、「若年層の無価値感を監視し、金銭化するような手法は、Facebookの批判者たちが長年警告してきたディストピア的未来への、具体的な一歩のように感じられます」と述べています。
ウィン=ウィリアムズ氏は、米国証券取引委員会(SEC)に78ページに及ぶ告発文書も提出しています。
著書は「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーとなり、メタ社による配布阻止の法的措置にもかかわらず、イギリスでも引き続き高い販売実績を示しています。
疑惑が拡大
この暴露は、2017年に豪紙「ザ・オーストラリアン」が実施した調査報道をさらに発展させる内容となっています。同紙は当時、Facebookが若年ユーザーの「無価値感」や「敗北感」、「失敗したような気分」を把握できることを広告主に誇示していたと報じていました。
ウィン=ウィリアムズ氏によれば、こうした心理的指標は仮説にとどまらず、特に10代のメンタルヘルスへの影響が指摘されているInstagramにおいて、実際の広告ターゲティング戦略に組み込まれていたといいます。
これに対し、旧Facebookのメタ社は彼女の告発に正面からは答えず、報道機関からの問い合わせには、2017年に公表したブログ記事を案内するにとどまりました。
同記事では、ユーザーの感情状態に基づいてターゲティングを行っていたとの指摘を否定し、引用された分析は「人々の自己表現を理解するためのものであり、集計された匿名データに基づいている」と説明しています。
しかし、同書に記された内部の詳細な証言や、進行中の製品開発に関する告発は、それとは異なる実態を示唆しています。ウィン=ウィリアムズ氏によれば、Facebookのプライバシー部門は、同社の直接的な監視がないまま、広告主が行動データから得られる洞察を活用できるようなツールの構築を認識しており、さらにはその開発を支援していたと述べています。
ウィン=ウィリアムズ氏は、メタ社が自分の本の宣伝を止めさせようと法的手段をほのめかしたと話し、情報公開の大切さを訴えています。
「Facebookはこうした被害に無関心だったわけではありません」と彼女は著書の中で述べています。「そのシステムは、むしろそうした被害を前提に設計されていたのです」