日本の石破茂首相は8月4日、衆議院予算委員会の集中審議において、米国が日本製自動車に課している25%の追加関税を15%に引き下げるため、トランプ米大統領へ大統領令の発出を強く求める考えを明らかにしました。
ロイター通信の報道によると、関税引き下げの履行は契約による方法よりも難しく、文書化が遅れるおそれがあるため、柔軟な手法で早期実現を図るべきだと主張されています。
石破首相は、必要に応じて日米首脳による直接協議も視野に入れていると述べ、対話を通じた信頼構築の重要性を訴えました。
また、自動車関税の引き下げに関する合意を文書化しなかった理由については、手続きの遅延を避けるためであったと説明し、迅速な対応を優先した姿勢を示しました。
首相はさらに、交渉の過程でトランプ大統領の特異な交渉姿勢に言及し、従来の枠組みにとらわれない対応を見せる人物だという認識を示しました。
関税引き下げ合意の背景とその課題
2025年7月22日、日米両政府は、日本からの自動車および部品の輸出に関して、25%の追加関税を15%まで段階的に引き下げる枠組みに合意したと、ブルームバーグが報じています。
これに伴い、日本は対米投資の拡大や米国産農産物の調達増加などの譲歩を示しましたが、合意内容は交渉を軸としたものであり、正式な署名文書は作成されていません。
このような非文書化の進め方については、関税の引き下げが予定通り実施されるかどうか、不透明さが残るとの見方もあります。経済再生担当相の赤澤亮正氏は、過去の英国との事例を挙げ、「手続きには1カ月以上を要したこともある」と述べました。政府は、今回の案件については大統領令によって速やかに対応されることを期待していると伝えられています。
自動車業界との意見交換と政府の対応姿勢
石破首相は7月31日、日本自動車工業会や関連部品団体の幹部らとともに意見交換の場を設け、日本自動車会館で業界の現状と課題について協議を行いました。
朝日新聞によると、会合では米国による関税の引き下げが27.5%から15%にまで進む見通しを受け、自動車業界関係者が歓迎の意を表明しました。その一方で、内需の喚起策や中小企業への支援強化についても政府に対し具体的な要望が出されたということです。
また、経済産業大臣の武藤容治氏は、必要に応じて追加支援も検討する考えを示しており、ブルームバーグの報道では、政府が関税対応だけでなく、自動車産業全体を視野に入れた包括的な支援策を強化していく姿勢を見せていると伝えられています。