国際通貨基金(IMF)のギータ・ゴピナート氏は、貿易戦争による衝撃は、新興国の中央銀行に対してCOVID-19パンデミック時とは異なる影響を及ぼしていると述べました。パンデミック時には迅速に金融緩和を実施できたのに対し、今回はそうした対応が難しくなっていると指摘しています。
英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、ゴピナート氏は「パンデミック時には迅速な金融緩和が可能だったが、今回は関税の影響が不透明で、新興国や世界市場に予測困難な影響を及ぼしており、中央銀行にとって政策運営がより難しくなっている」と指摘しました。
「今回はパンデミック時と比べて、より大きな課題になります」と同氏は語りました。
ゴピナート氏は、トランプ氏の貿易政策が予測不能であることから、新興国は「霧の中を航行している」ような状態にあり、状況は一層不安定になっていると述べました。
トランプ氏の予測不能な貿易政策
トランプ氏は4月、世界中のほぼすべての国からの輸入品に対して一律10%の関税を課すと発表し、さらに鉄鋼、アルミニウム、自動車分野には25%の追加関税を導入しました。
また、数十か国に対してはさらに高い関税を課す方針を示しましたが、交渉の余地を残すため、それらの適用は7月まで一時停止されています。
先月、米中はジュネーブでの協議の結果、一時的な関税引き下げで合意しましたが、その後トランプ氏は中国が休戦合意に違反したと非難しました。
金曜日、トランプ氏はペンシルベニア州ウェスト・ミフリンでの集会で、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を50%に引き上げると述べ、世界的な貿易戦争をさらに激化させる姿勢を示しました。
トランプ氏は貿易戦争が米国経済を後押しすると主張していますが、経済協力開発機構(OECD)は米国の成長率見通しを2.2%から1.6%へと大幅に引き下げました。これは先進国の中で最大の下方修正となっています。