TRT Global - イスラエルとパレスチナの紛争の歴史における10月7日の意味

2025年2月28日

イスラエルとパレスチナの紛争の起源は19世紀後半にまでさかのぼります。当時、ユダヤ人の祖国をパレスチナに建設することを目指したシオニズム運動が台頭しました。それ以来、この地域は一連の戦争、占領、反乱に巻き込まれてきました。

これは、この紛争がこれほど激しく燃え上がったのが初めてではありません。1948年のアラブ・イスラエル戦争、1967年の六日間戦争、1982年のレバノン戦争、さらには2度にわたるパレスチナのインティファーダと、この地域は数えきれないほどの暴力的な衝突を経験してきました。しかし、10月7日が際立っているのは、ハマスがイスラエルの領土を短時間ながら保持できたことです。これは、これまでのパレスチナの抵抗組織が達成できなかった成果です。

ハマスの戦闘員は、イスラエル軍のガザ師団の本部であるレイム軍事基地を占拠し、そこに駐留していたイスラエル軍兵士全員を殺害または捕虜としました。その後、イスラエル軍は基地を奪還しましたが、この出来事はイスラエルの軍事的優越性を揺るがす結果となりました。

なぜ10月7日は特別なのか？

多くのパレスチナの解説者にとって、10月7日の出来事は前例のないものでした。パレスチナ人の教授で作家、政治アナリストのカーメル・ハワッシュ氏は「私の記憶にはありません」と語り、10月7日がイスラエル領土を保持する点で紛争の中で特異な出来事だったとTRT Worldに述べました。

別のパレスチナ人学者であるサミ・アル＝アリアン氏も同様の見解を示し、ハマスがイスラエルを攻撃した例は過去にもあったが、短期間とはいえ今回が初めてイスラエル領土を保持したと指摘しました。

「さらに、1973年の戦争以来、初めてイスラエルが攻撃を受けた例と言えるでしょう。ただし、今回はイスラエルが『自国の』領土内で攻撃を受けた点で1973年とは異なります。当時はエジプトがシナイ半島で、シリアがゴラン高原で攻撃を行いました」とアリアン氏はTRT Worldに語りました。

シナイ半島は、イスラエルによって2度侵略されました。最初は1950年代後半、2回目は1967年から1982年の間であり、エジプトの領土です。また、1973年以来テルアビブの占領下にあるゴラン高原も公式にはシリアの一部です。

国際危機グループの中東プログラムディレクター、ユースト・ヒルターマン氏は、10月7日の意義について「これまで一度も見たことがない出来事です」と振り返りました。ただし、この出来事が紛争の長年続くパターンの延長線上にあるとも指摘しました。

ヒルターマン氏は、この攻撃を「これまでの全てを組み合わせたもの」と表現し、1960年代から1970年代にかけてのエジプトや他のアラブ諸国による国家支援から、インティファーダ、そしてイスラエルとの複数のガザ戦争に至るまで、さまざまなパレスチナ抵抗運動の段階を強調しました。

一部の分析者は、1973年の10月戦争との類似性を注目しました。この戦争もまた、10月初めに始まった重要なアラブ・イスラエル紛争の一つでした。しかし、今回はイスラエルが自国の領土内で攻撃を受けた点で1973年とは大きく異なります。当時はエジプトとシリアがイスラエル占領地を標的にしていました。

2023年10月7日、ハマスの攻撃により、民間人を含む1,180人のイスラエル人が死亡し、2,400人が負傷しました。また、パレスチナ抵抗組織はガザで251人を人質として捕らえました。この攻撃の後、イスラエルは女性や子供を主に42,000人近くのパレスチナ人を殺害しました。

10月7日は何を変えたのか？

10月7日以前、イスラエルは、イスラム教徒が多数を占めるアラブ地域において、歴史的にユダヤ人国家の存在が拒否されてきた中東の政治的構図が、自国に有利に変わりつつあると確信していました。これは、トランプ政権の仲介により、いくつかのアラブ諸国がイスラエルとの関係正常化を進めていたためです。

パレスチナ人作家で分析者のラムジー・バルード氏は、これらの正常化、パレスチナ自治政府の疎外、そして現在進行中のガザ封鎖について次のように述べています。「10月7日以前、イスラエルはパレスチナでの入植植民地プロジェクトの最終章を書き上げようとしているように見えました。イスラエルはほぼ完全にパレスチナ指導部を抑え込み、アラブ諸国によるパレスチナへの名ばかりの支援を分断し、ヨルダン川西岸の大部分を併合する準備を進めていました。」

バルード氏は、ネタニヤフ首相が2023年の国連演説でパレスチナの領土を含まない地図を「新しい中東」として提示したことを「歴史の破壊的な瞬間の頂点」と表現しました。さらに、「ネタニヤフ首相のビジョンでは、パレスチナは政治的現実として存在せず、パレスチナ人は主体性と希望を持つ民族としてもはや重要ではありません」と語りました。

しかし、ネタニヤフ首相の国連演説からわずか2週間後の10月7日、予想外の出来事が全てを変えました。バルード氏は、「この出来事は、パレスチナ人を中東の将来の平和の中心に戻し、暴力によって政治的結果を押し付けるイスラエルの軍事能力を無効化し、さらに、イスラエルとアラブ諸国の正常化が成り立たない茶番であることを明らかにしました」と述べています。

10月7日の攻撃により、ハマスは「特に提案されたインド・中東・ヨーロッパ経済回廊を通じて、イスラエルの中東統合を非常に効果的に妨害し、『新たな戦争を始めました』」とヒルターマン氏は述べました。しかし、彼は同時に、ハマスが全体的に大きな成果を上げたわけではないとも考えています。

地域的な影響

イスラエルの国際的な立場は、圧力にさらされています。特にヨーロッパを中心とした西側諸国では、イスラエルの行動に対する批判が高まっています。一方、パレスチナ支持者たちは、世界的な世論の中でその支持を拡大しつつあります。

10月7日以降、イスラエルの地域外交、特に正常化に向けて進んでいたサウジアラビアとの交渉は停滞しました。サウジアラビアはガザでの大量虐殺を容認できないとして、テルアビブとの正常化を拒否しました。トルコ、南アフリカ、イランなどの国々はイスラエルの行動に対する批判を新たにし、国連では中国やロシアなどの大国がイスラエルの行為に懸念を表明しました。

国連の専門家たちは、イスラエルが「孤立国家」となる危険性があると警告しました。アメリカとは異なり、国連の場では、中国とロシアの2大国が、レバノンにおけるイスラエルのポケベルや無線機を使用した攻撃を非難しました。これらの行為は国際人道法違反とみなされ、スペインやアイルランドなどのヨーロッパ諸国は、テルアビブに対してさらなる侵害を警告しました。

バルード氏は、イスラエルの占領や人権侵害に反対し、ガザへの連帯を示す新たな形の正当性が世界的に台頭し始めていると主張しています。この変化は古い秩序に取って代わりつつあり、イスラエルが「言葉にできないような残虐行為」を続ける一方で、パレスチナ人の「伝説的な抵抗」に直面していると述べています。

「正当性は今や、ガザと連帯し、ガザのために戦い、命を捧げ、ガザの名の下で紛争の範囲を広げる者たちに帰属しています。一方、この方程式の反対側にいる者たちは、これまでにないほどの正当性の喪失を経験しました。」

10月7日は、間違いなくイスラエルとパレスチナの紛争の構図を大きく変えました。一度は確立されたと見なされていた「イスラエルの完全支配とパレスチナの希望の消滅」という政治的構図は、今や揺らぎ、不確実なものとなっています。この攻撃は、イスラエルの脆弱性を露呈させただけでなく、中東における平和がパレスチナ問題の解決なしには達成できないことを再確認させました。

「これは、10月7日以降、アラブ諸国におけるイスラエルの立場や、アメリカ中心の地域的権力構造を含め、ここ数十年にわたりパレスチナや中東全体を支配してきた政治的・地政学的ルールが再構築される必要があることを意味します」とバルード氏は述べています。