世界中
7分読む
「気候ビザ」とは何か、なぜツバルの住民がそれを求めているのか
海面上昇によって島国ツバルが水没の危機に直面する中、人口のおよそ3分の1がオーストラリアの「気候ビザ」を申請しています。
「気候ビザ」とは何か、なぜツバルの住民がそれを求めているのか
オーストラリアは、気候変動による移住協定の一環として、毎年ツバル国民280人にビザを提供しています。/ 写真: AFP / AFP
2025年6月26日

太平洋の島国ツバルでは、ヤシの木に囲まれた海岸が海面上昇により脅かされる中、国民のおよそ3分の1がオーストラリアでの生活を可能にする「気候ビザ」を申請しています。AFPが入手した公式統計で明らかになりました。

オーストラリア政府は、世界初の気候移住協定として、ツバル国民に対して毎年280人分のビザを提供しています。

オーストラリアのプログラムに関する公式データによると、すでに3,000人以上のツバル国民が初回分のビザに応募しており、これは国の人口の約3分の1に相当します。

気候変動の影響を最も受けやすい地域の一つであるツバルは、今後80年以内に居住不可能になると科学者たちは懸念しています。

この群島を構成する9つのサンゴ環礁のうち、すでに2つはほぼ水没しています。

オーストラリア外務省はAFPに対し、「オーストラリアは、特に太平洋地域の気候脆弱国や人々の生計、安全、福祉に対する気候危機の壊滅的な影響を認識しています」と述べました。

オーストラリアとツバルは2024年に画期的な「ファレピリ連合」協定に署名しました。これは、地域における中国の影響力拡大を抑制するキャンベラの取り組みの一環です。

この協定に基づき、オーストラリアはツバルの成人市民向けに特別なビザ枠を新設しました。

すでに、プログラムには想定を大きく上回る申請が見込まれています。

公式データによると、先週開始された無作為抽選には、開始からわずか4日間で3,125人のツバル国民が登録しました。

オーストラリア外務省の報道官は、「これは世界で初めての協定であり、気候変動の影響が深刻化する中、人々に尊厳ある移動の道を提供するものです」と述べました。

ツバルの人口は2022年の国勢調査で1万643人と報告されています。

登録料はオーストラリアドルで25ドル(米ドルで約16ドル)で、抽選の受付は7月18日に締め切られます。

「将来に希望はほとんどない」

このビザ制度は、気候変動による移住への対応として国際的に注目されています。

この制度は、ツバル国民にオーストラリアでの生活、学習、就労の選択肢を提供します」と、オーストラリア外務省は述べています。

一方で、この制度によりツバルから若い人材や専門職が急速に流出することへの懸念も広がっています。

シドニー大学の地理学者ジョン・コネル氏は、長期的な人材流出がツバルの将来を脅かす可能性があると警告しました。

「小国では職が限られ、多くの分野でそれほど人手を必要としない」と、コネル氏はAFPに語りました。

また、「環礁では将来に大きな展望はありません。農業は難しく、漁業には大きな可能性がありますが、雇用を生み出すほどではありません」とも述べました。

ファレピリ協定では、オーストラリアが自然災害や感染症の流行、さらには「軍事的侵略」に対してツバルを防衛することが約束されています。

ツバルのフェレティ・テオ首相は当時、「ツバルが大規模な自然災害、感染症のパンデミック、または軍事的侵略に直面した際、要請があれば支援することを法的に約束した国が初めて現れました」と述べました。

「気候変動による海面上昇が深刻化する中でも、ツバルの将来の国家としての地位と主権を法的に認めると約束した国は、これが初めてです」とも述べました。

この協定には、ツバルが他国と結ぶ防衛協定に対して、オーストラリアが関与する権利も含まれています。そのため、ツバルが主権の一部を手放すことになるのではないかという懸念の声も上がりました。

ツバルは現在も、北京ではなく台北と正式な外交関係を維持しているわずか12か国のひとつです。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は昨年、「平和で安定し、繁栄し、一体となった地域」というビジョンを共有していると述べました。

さらに、「この協定は、太平洋のパートナー諸国にとって、オーストラリアが信頼できる誠実なパートナーであることを示しています」と語りました。

TRT Globalを先行チェック!ご意見をお聞かせください!
Contact us