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プラスチック条約、合意難航
石油生産国と環境重視国の間で、プラスチック規制の範囲を巡る対立が続いています。
プラスチック条約、合意難航
スイスでのプラスチック汚染防止条約交渉(2025年8月)/ 写真: AP
1日前

スイスのジュネーブで8月14日まで行われている、プラスチックによる環境汚染を防止するための国際条約策定交渉は、最終日を迎えても依然として合意に達していません。交渉では、プラスチック生産の削減や有害化学物質の規制を巡り、各国の立場の隔たりが大きく、条約の実現が不透明な状況となっています。

AP通信によれば、8月13日に公表された最新のドラフトは、プラスチックの生産制限や有害化学物質の規制には踏み込まず、再利用の促進や問題プラスチックの削減、廃棄物管理の強化といった比較的緩やかな措置にとどまっています。

このため、コロンビアやEU加盟国、英国など多くの国々や環境団体は「意欲に欠ける」「産業界寄りだ」として強く反発しています。

一方、サウジアラビアをはじめとする石油産出国や米国は依然として「生産制限ではなく廃棄物管理で対応すべきだ」との立場を堅持しています。

今回の交渉には184か国以上が参加し、関係団体も600を超えています。国際社会は今、まさに地球規模での岐路に立たされていると言えます。

また、交渉の現場では皮肉にも、すでに人体や環境に入り込んでいる微細プラスチックを可視化する実験が行われ、空気中にも多数のマイクロプラスチックが漂っていることが明らかになりました。

こうした発見は、「リサイクルだけでは不十分で、生産削減にも踏み込むべきだ」との主張を後押ししています。

日本の現状:利用とリサイクルの課題

日本では、一人当たり年間およそ450枚のレジ袋を使用しており、これは先進国の中でも高い水準にあたります。また、年間で約1,000万トンのプラスチックが生産され、その78%が製造から1年以内に廃棄されています。

リサイクル率の場合、日本ではこの率が84~87%と報告されていますが、その多くは焼却による熱回収であり、真の素材リサイクル率は23~25%程度にとどまっています。

さらに、2021年に施行された「プラスチック資源循環促進法」により、小売業界などはリサイクル推進や生分解性素材の使用が義務付けられ、2030年までにプラスチック廃棄量を25%削減する目標も設定されています。

技術面では、三菱電機が静電選別技術を活用した混合プラスチックの高精度分類システムを商用化しつつあり、将来的にはAI連携による自動化も見込まれています。

加えて、荏原製作所などは化学リサイクル技術を用いて、分別不要の混合廃棄物から合成ガスを抽出し、再生プラスチック原料に変換する実用化を2030年までに目指しています。

世界中でプラスチックによる環境汚染が深刻化しており、海洋や土壌、空気中に微細なプラスチックが蓄積することで、生態系や人間の健康への影響が懸念されています。

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